部活顧問が見てるだけなのはなぜ?理由と生徒・保護者ができる対処法を解説

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「部活の顧問が、ただ見てるだけで何も指導してくれない…」「練習に来ても、腕を組んでグラウンドの隅に立っているだけ…」そんな悩みを抱えていませんか?部員としては、もっと熱心に指導してほしい、アドバイスがほしいと感じますよね。また、お子さんを部活に送り出している保護者の方も、顧問の姿勢に不安や不満を感じることがあるかもしれません。

しかし、なぜ顧問は「見てるだけ」なのでしょうか。実は、その背景には指導方針や専門知識の問題、教員の多忙さなど、様々な理由が隠されていることがあります。この記事では、「部活顧問が見てるだけ」になってしまう理由を多角的に解説し、生徒や保護者がこの状況を改善するためにできる具体的な対処法を、やさしくわかりやすくお伝えします。

目次

なぜ?部活顧問が「見てるだけ」になってしまう主な理由

部活顧問が指導をせず、ただ見ているだけになってしまう背景には、顧問個人のやる気の問題だけでなく、学校が抱える構造的な課題も関係しています。ここでは、その主な理由を3つの側面から解説します。

理由1:指導したくてもできない「専門外」という壁

教員は、自身の専門教科や過去の部活動経験に関わらず、学校の人事異動や人員配置の都合で、全く経験のない部活の顧問を任されるケースが少なくありません。 例えば、学生時代は文芸部だった先生が、サッカー部の顧問になることもあり得ます。

このような場合、顧問自身が競技のルールや専門的な技術、効果的な練習方法を知らないため、指導したくてもできないという状況に陥ります。 間違った指導をして生徒に怪我をさせてしまうリスクを考え、まずは安全管理に徹し、生徒の活動を見守ることに専念せざるを得ないのです。 生徒からは「見てるだけ」と見えても、顧問自身もどう指導すれば良いか分からず、悩みながらも責任感からその場にいる、という可能性も考えられます。

理由2:授業や校務で手一杯…「多忙」という現実

教員の仕事は、授業の準備や実施、テストの採点、保護者対応、会議への出席など、多岐にわたります。 これらは「校務」と呼ばれ、教員の本来の業務です。一方で、部活動の指導は、これらの正規の勤務時間外に行われることがほとんどです。

特に熱心な部活動ほど、朝練や放課後の練習、土日の練習試合や大会の引率などで、顧問のプライベートな時間は大幅に削られていきます。 心身ともに疲弊している中で、部活動の指導にまで手が回らず、せめて生徒の安全確保のために「見ている」ことしかできない、という教員も少なくないのが現状です。 これは顧問個人の意欲の問題というよりも、教員の過重労働という大きな問題が背景にあります。

理由3:あえて口出ししない「指導方針」の可能性

一見すると「見てるだけ」や「放置」に見えるスタイルが、実は顧問の教育的な意図に基づいた指導方針である可能性もあります。これは「コーチング」と呼ばれるアプローチに近い考え方です。

具体的には、顧問が一方的に答えを教える(ティーチング)のではなく、生徒自身に考えさせ、課題を見つけ、解決策を導き出させることを目的としています。 生徒の自主性や主体性を育むためには、大人がすぐに口や手を出すのを我慢し、見守る姿勢が重要になる場面があります。 もちろん、この指導法が機能するためには、顧問と生徒の間に信頼関係があり、目標が共有されていることが前提となります。ただ、生徒側がその意図を理解できていないと、単なる「放置」だと感じてしまい、不満につながることがあります。

「見てるだけ」の部活顧問、実はこんな意図が隠されているかも?

顧問が「見てるだけ」なのは、ネガティブな理由だけとは限りません。生徒の成長を願うからこそ、あえて距離を置いて見守るという指導スタイルも存在します。ここでは、そのポジティブな意図について掘り下げてみましょう。

意図1:生徒の「自主性」と「考える力」を育むため

部活動は、生徒が主体的に活動する場です。 顧問が練習メニューの作成から実践、反省まで全てを指示してしまうと、生徒は指示待ちの状態になりがちです。そこで、あえて生徒たち自身に目標設定や練習計画を考えさせ、試行錯誤させることで、自主性や問題解決能力を育もうとしているのかもしれません。

例えば、「どうすれば試合に勝てるか」「今のチームの課題は何か」といったことを部員同士で話し合わせ、実践させる。顧問はそのプロセスをじっくり観察し、生徒たちが行き詰ったときや、明らかに間違った方向に進んでいるときにだけ、ヒントを与えるような形で関わります。このような関わり方は、社会に出てからも必要とされる主体的に行動する力を養う上で非常に効果的です。

意図2:チーム全体を「俯瞰」して課題を見つけるため

練習中に個々の生徒に付きっきりで技術指導をしていると、チーム全体の動きや、部員同士のコミュニケーションといった、より大きな視点での課題を見逃してしまうことがあります。そこで、少し離れた場所からチーム全体を俯瞰(ふかん)して観察することで、個人の技術だけではない、チームとしての課題を発見しようとしている可能性があります。

例えば、「特定の選手にボールが集まりすぎていないか」「声かけが少なく、連携が取れていないのではないか」「練習の雰囲気が悪くなっていないか」といった点は、全体を見ているからこそ気づけることです。 顧問は、そこで見つけた課題をミーティングで生徒たちに伝えたり、次の練習メニューに反映させたりすることで、チーム力の向上を目指しているのかもしれません。

意図3:何よりも「安全管理」を最優先しているため

部活動において、顧問の最も重要な役割の一つが生徒の安全を確保することです。 特に、専門外の競技を担当している顧問や、多くの部員を一人で見なければならない顧問にとっては、技術指導よりも安全管理が最優先事項となります。

練習施設や用具に危険な箇所はないか、生徒の体調に変化はないか、部員同士のトラブルが起きていないかなど、常に全体に気を配り、事故や怪我を未然に防ぐことに集中しているのです。 生徒が安全に活動できる環境を整えることが、顧問の第一の責任であると考えているため、一見すると「見てるだけ」に見えても、実は常に神経を張り巡らせて生徒たちの安全を見守っているのです。

これは問題かも…「見てるだけ」の部活顧問が引き起こすデメリット

顧問の「見てるだけ」という姿勢には、教育的な意図がある場合もありますが、それが機能不全に陥ると、生徒やチーム全体に様々な悪影響を及ぼす可能性があります。ここでは、注意すべきデメリットについて解説します。

デメリット1:生徒のモチベーションが低下してしまう

多くの生徒は、技術の向上や試合での勝利を目指して部活動に取り組んでいます。しかし、顧問からの具体的なアドバイスや指導が全くないと、「何を目標に頑張ればいいのか分からない」「自分たちのやっていることは正しいのだろうか」と不安になり、次第に練習への意欲、つまりモチベーションを失ってしまうことがあります。

また、「顧問は自分たちに興味がないんだ」と感じることで、孤独感や不信感が募り、部活動そのものが楽しくなくなってしまうケースも少なくありません。 生徒のやる気を引き出し、目標達成をサポートすることも顧問の重要な役割ですが、「見てるだけ」の状態が続くと、その役割が果たされず、生徒の成長の機会を奪うことにもつながりかねません。

デメリット2:技術や戦術が向上せず、成長が停滞する

特に初心者が多い部活動や、専門的な知識が求められる競技において、顧問からの適切な指導がないと、生徒の技術レベルがなかなか向上しません。自己流の練習では、間違ったフォームが身についてしまったり、効率の悪い練習を続けてしまったりすることがあります。

また、チームスポーツにおいては、個人の技術だけでなく、チームとしての戦術理解も重要です。顧問が練習試合の分析や戦術指導を全く行わない場合、チームはいつまでも同じ戦い方しかできず、成長が停滞してしまいます。結果として、試合に勝てない状況が続き、それがさらに生徒のモチベーション低下を招くという悪循環に陥ることも考えられます。

デメリット3:練習中の怪我や事故のリスクが高まる

顧問がただ漫然と見ているだけで、生徒の安全管理への意識が低い場合、練習中の怪我や事故のリスクが高まります。 例えば、危険な練習方法を生徒がしていても注意しなかったり、体調の悪い生徒に気づかず練習を続けさせたり、用具の安全点検を怠ったりといったことが考えられます。

特に、体罰や過度な精神論を伴う指導が行われている場合、生徒は怪我や不調を言い出しにくい状況に追い込まれることもあります。顧問には、生徒一人ひとりの心身の状態を注意深く観察し、安全に活動できる環境を確保する責任があります。 「見てるだけ」で安全配慮が欠けている状態は、非常に危険と言えるでしょう。

部活顧問が見てるだけで困っている…誰に、どう相談すればいい?

顧問の「見てるだけ」の状態に悩み、このままではいけないと感じたとき、どのように行動すれば良いのでしょうか。感情的に動くのではなく、順序立てて冷静に行動することが大切です。ここでは、具体的な相談先と、その際のポイントを解説します。

ステップ1:まずは勇気を出して顧問本人と話してみる

最初に試みたいのは、部員たちから顧問本人に直接、丁寧に相談してみることです。キャプテンや副キャプテンが中心となり、「先生、私たち〇〇の技術について悩んでいるので、アドバイスをいただけませんか?」「次の大会に向けて、どのような練習をすれば良いか、先生の考えを聞かせてください」といった形で、前向きな質問を投げかけてみましょう。

このとき、顧問を非難するような言い方(「なぜ何も教えてくれないんですか?」など)は避けるのがポイントです。もしかしたら、顧問は生徒から声をかけられるのを待っているのかもしれませんし、自主性を尊重するあまり、どこまで関与して良いか迷っているのかもしれません。 この対話によって、顧問の考えが分かり、状況が改善する可能性があります。

ステップ2:他の先生(学年主任や教頭など)に相談する

顧問本人と話しても状況が変わらない、または話しにくい雰囲気がある場合は、学校内の他の信頼できる先生に相談するという方法があります。 学年主任の先生や、生活指導の先生、あるいは管理職である教頭先生や校長先生などが相談先として考えられます。

相談する際は、感情的に不満をぶつけるのではなく、「〇〇部の活動について相談があります。部員みんなで頑張りたいのですが、指導の面で困っていることがあり、どうすれば良いか悩んでいます」というように、具体的な事実と、自分たちがどうしたいのかを冷静に伝えましょう。複数の部員で相談に行くと、問題の深刻さが伝わりやすくなります。学校側が状況を把握し、顧問に働きかけてくれたり、何らかの対策を考えてくれたりする可能性があります。

ステップ3:保護者に相談し、学校へ伝えてもらう

生徒だけでは解決が難しいと感じた場合は、保護者の方に相談し、保護者の立場から学校に伝えてもらうのも有効な手段です。保護者から学校への相談は、生徒が直接訴えるよりも重く受け止められる傾向があります。

保護者の方が学校に連絡する際は、個人面談や電話などで、まずは担任の先生や顧問の先生に現状を伝えます。それでも改善が見られない場合は、学年主任や教頭、校長といった管理職の先生に相談の範囲を広げていきます。 このときも、特定の顧問を攻撃するのではなく、「子どもたちが部活動に真剣に取り組む中で、指導面でこのような課題があり、成長の機会が損なわれていないか心配しています」といった形で、子どもの成長を願う視点から話を進めることが重要です。

保護者としてできることとは?「見てるだけ」の部活顧問への関わり方

お子さんから部活の顧問に対する不満を聞いたとき、保護者としてどのように関われば良いのでしょうか。感情的に学校へ乗り込むのではなく、冷静に状況を把握し、建設的なアプローチを考えることが大切です。

まずは子どもの話をじっくりと聞く

まず最も大切なのは、お子さんの話を遮らずに、じっくりと聞くことです。お子さんが何に不満を感じ、どういう状況に困っているのかを正確に理解しましょう。「顧問が見てるだけ」という言葉の裏には、「アドバイスがもらえない」「やる気を感じられない」「安全面が不安」など、様々な感情や事実が隠れているはずです。

一方的に顧問を悪者にするのではなく、「そう感じているんだね」「具体的にどんなことがあったの?」と共感的に耳を傾け、事実関係を整理することが第一歩です。お子さんの気持ちを受け止めることで、お子さん自身も冷静に状況を振り返ることができ、次の行動を考えるきっかけになります。

他の保護者と情報交換をしてみる

もし可能であれば、同じ部活の他の保護者の方と情報交換をしてみるのも有効です。自分のお子さんだけが不満を感じているのか、それとも多くの部員が同じように感じているのかを確認することで、問題の客観性を把握できます。

複数の家庭で同様の懸念が上がっている場合、それは個人的な感情ではなく、部活動全体の問題である可能性が高まります。他の保護者と連携することで、学校へ相談する際にも、より多くの意見として伝えられ、学校側も問題の重要性を認識しやすくなります。ただし、噂話や悪口のようになってしまわないよう、あくまでも建設的な情報交換を心がけましょう。

外部指導員の導入を学校に提案する

顧問が専門外であったり、多忙であったりすることが「見てるだけ」の原因である場合、「部活動指導員」や「外部指導者」といった外部の人材の協力を得られないか、学校に提案してみるという方法もあります。

「部活動指導員」は、学校職員として位置づけられ、単独で指導や大会の引率が可能な場合があります。 一方、「外部指導者」は、主に技術指導のサポートを行います。 保護者会などを通じて、「子どもたちの専門的な指導のために、地域のスポーツ経験者などに協力をお願いできないでしょうか」といった形で学校や教育委員会に提案することで、状況が改善される可能性があります。 これにより、顧問の負担が軽減されるとともに、生徒は専門的な指導を受けられるというメリットが生まれます。

まとめ:「部活顧問が見てるだけ」の状況を乗り越えるために

この記事では、「部活顧問が見てるだけ」という状況がなぜ起こるのか、その理由から対処法までを詳しく解説しました。

顧問が「見てるだけ」になる背景には、専門外で指導できない、多忙で手が回らないといったやむを得ない事情から、生徒の自主性を育むという教育的な意図まで、様々な要因が考えられます。

一方で、その状態が生徒のモチベーション低下や成長の停滞、安全上のリスクにつながっている場合は、決して放置すべき問題ではありません。

もしあなたがこの問題で悩んでいるなら、まずは顧問本人や他の先生、保護者の方に相談することから始めてみましょう。大切なのは、一方的に不満をぶつけるのではなく、どうすれば部活動がより良くなるかという前向きな視点で対話することです。この記事で紹介した知識や対処法が、あなたが部活動の時間をより充実させるための一助となれば幸いです。

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