夏休みの宿題の中でも、特に頭を悩ませるのが自由研究ではないでしょうか。テーマは決まったけれど、「目的」をどう書けばいいのか分からない、動機との違いがよく分からない、と手が止まってしまうお子さんや保護者の方は多いはずです。しかし、研究の「目的」は、自由研究全体の方向性を決める、いわば設計図のようなもの。ここがしっかりしていると、その後の研究やまとめが驚くほどスムーズに進みます。
この記事では、自由研究の目的の書き方について、基本的な考え方から具体的なステップ、さらにはテーマ別の例文まで、誰にでも分かりやすく、やさしく解説していきます。この記事を読めば、目的の書き方に悩むことなく、自信を持って自由研究に取り組めるようになります。
そもそも自由研究の「目的」って何?書き方の基本をおさえよう
自由研究をまとめるとき、「目的」という項目を目にして、何を書けばいいのだろうと戸惑った経験はありませんか。目的は、研究の心臓部ともいえる大切な部分です。ここでは、なぜ目的が重要なのか、そしてよく混同されがちな「動機」との違いなど、目的の書き方の基本について解説します。
なぜ目的を決めることが大切なの?
自由研究における「目的」とは、「この研究を通して何を明らかにしたいのか」というゴールのことです。 目的を最初にしっかりと設定することで、研究の方向性が定まり、途中で道に迷ってしまうのを防ぐことができます。
例えば、「いろいろな花の観察」という漠然としたテーマだけでは、どこをどう観察し、何を記録すればいいのか分かりにくくなってしまいます。しかし、「アサガオは本当に朝に咲き、昼にはしぼむのかを明らかにすること」という目的を立てれば、観察すべき時間帯や記録すべき内容が具体的になります。
また、研究の最後に「考察」や「まとめ」を書く際にも、目的が明確であれば、目的が達成できたかどうか、という視点で振り返ることができるため、内容の濃いまとめを書きやすくなります。
「動機」との違いは?
「目的」とよく似た言葉に「動機」があります。この二つの違いを理解することが、分かりやすいレポートを書くための第一歩です。
- 動機:研究を「やろうと思ったきっかけ」や「理由」のことです。 日常生活で「なぜだろう?」と不思議に思ったことや、「もっと知りたい!」と感じた興味・関心が動機になります。
- 目的:その動機(きっかけ)から一歩進んで、「その研究で何を具体的に解明したいのか」というゴールを指します。
時系列で考えると、「過去」の気持ちが動機、「未来」のゴールが目的、と捉えると分かりやすいかもしれません。 例えば、「道端のタンポポは場所によって綿毛の形が違う気がした(動機)。そこで、日当たりの良い場所と日陰の場所のタンポポの綿毛の形に違いがあるのかを明らかにしたい(目的)。」というように、動機と目的はつながっています。
目的を書くときの基本的な構成要素
目的を書く際には、誰が読んでも「この研究が何を目指しているのか」が明確に伝わるように、具体的な言葉で表現することが重要です。一般的には、文の終わり方を「~を明らかにすること」「~を調べること」「~を確かめること」「~を比較すること」といった形で締めくくると、目的であることが分かりやすくなります。
例えば、以下のような表現が考えられます。
- 実験・観察系:「〇〇と△△では、どちらが早く凍るのかを比較し、その理由を明らかにすること。」
- 調べ学習系:「私の住む〇〇町の名前の由来と、その歴史について調べること。」
- 工作系:「最もよく飛ぶ紙飛行機の翼の形や重心の条件を見つけ出すこと。」
このように、具体的なアクションを示す言葉を使うことで、研究のゴールが明確になり、読み手にも内容が伝わりやすくなります。
【例文あり】自由研究の目的の書き方4ステップ
目的の重要性が分かったところで、次は実際に目的をどうやって作っていくのか、具体的なステップを見ていきましょう。難しく考える必要はありません。自分の「知りたい!」という気持ちを整理していく作業だと考えて、4つのステップに沿って進めてみてください。
ステップ1:不思議に思ったこと・知りたいことを書き出す
まずは、研究のタネとなる「不思議」や「疑問」を思いつくままに書き出してみましょう。これは「動機」の部分にあたります。 普段の生活の中で「これってどうして?」「もっと知りたいな」と感じたことを、難しく考えずにリストアップするのがコツです。
例えば、
- 「どうして虹は七色に見えるんだろう?」
- 「お母さんが作る梅ジュースは、なぜ時間が経つと色が変わるの?」
- 「いつも通る公園には、どんな種類のセミがいるんだろう?」
- 「塩と砂糖、どっちが早く水に溶けるのかな?」
- 「おじいちゃんの家は昔、どんな 모습だったんだろう?」
など、ささいなことでも構いません。この「知りたい」という好奇心が、自由研究の原動力になります。この段階では、テーマを一つに絞る必要はありません。とにかくたくさんアイデアを出すことが大切です。
ステップ2:「何を明らかにしたいのか」を明確にする
次に、ステップ1で書き出した疑問の中から、一番調べてみたい、実験してみたいと思うものを一つ選びます。そして、その疑問に対して「具体的に何が分かれば、この疑問は解決するのか」を考えてみましょう。これが「目的」の核となる部分です。
例えば、「塩と砂糖、どっちが早く水に溶けるのかな?」という疑問を選んだとします。この疑問を解決するために明らかにしたいことは何でしょうか。それは、「同じ量の水に、同じ量の塩と砂糖を溶かしたとき、溶けきるまでの時間に違いがあるのかどうか」ということです。
このように、漠然とした疑問を、検証可能で具体的な「問い」の形に変換していく作業が重要です。この「問い」が、研究のゴール、つまり目的になります。
ステップ3:具体的な言葉で表現する
「何を明らかにしたいのか」が固まったら、それを文章にしていきます。ステップ2で考えた「問い」を、目的としてふさわしい言葉で表現し直しましょう。前述の通り、「~を明らかにすること」「~を調べること」といった形で締めくくるのが基本です。
先ほどの「塩と砂糖」の例で考えてみましょう。
- 動機(きっかけ):「料理を手伝っているとき、塩と砂糖では水への溶け方が違うように感じたから。」
- 目的:「同じ温度・同じ量の水に対して、塩と砂糖ではどちらが早く溶けきるのかを比較し、その時間を明らかにすること。」
このように書くことで、研究のゴールが非常に明確になります。動機と目的をセットで書いてみると、研究の背景と目指す場所がつながり、より分かりやすくなります。
ステップ4:目的を達成するための仮説を立てる
目的が明確になったら、その目的を達成するために、自分なりの「予想(仮説)」を立ててみましょう。 仮説とは、「おそらくこうなるだろう」という、現時点での答えの予測のことです。
例えば、「塩と砂糖では、砂糖の方が早く溶けるだろう」といった具体的な予想を立てます。なぜそう思うのか、理由も一緒に考えてみるとさらに良いでしょう。「砂糖の粒の方が小さいから」など、自分なりの根拠で構いません。
仮説を立てることで、実験や観察の際に、何に注目して結果を見ればよいのかがはっきりします。 そして、最終的に結果が予想通りだったのか、それとも違ったのかを考察することで、研究がより深まります。自由研究では、予想が当たることよりも、その結果から何が言えるのかを考えるプロセスが大切なのです。
テーマ別!自由研究の目的の書き方と具体例
目的の立て方は分かったけれど、自分の研究テーマにどう当てはめればいいか分からない、という方もいるでしょう。ここでは、自由研究で人気の高い「理科・科学実験」「社会・調べ学習」「工作・観察」の3つのテーマについて、具体的な目的の書き方と例文を紹介します。
【理科・科学実験】の目的の書き方
理科や科学の実験は、自由研究の王道テーマです。 実験系の研究では、「条件を変えると結果はどう変わるのか」を明らかにすることが目的の中心になります。何を比較したいのか、何を明らかにしたいのかを具体的に示すことがポイントです。
- テーマ例1:10円玉をピカピカにする実験
- 動機:おばあちゃんから受け取った10円玉がピカピカで、どうしてか気になった。
- 目的:醤油、レモン汁、お酢、ソース、ケチャップの中で、どの液体が最も10円玉のサビを落とす効果があるのかを比較・検証すること。
- テーマ例2:野菜の浮き沈み実験
- 動機:お風呂でおもちゃが浮くのに、なぜ石は沈むのか不思議に思った。野菜でも同じことが起きるのか知りたくなった。
- 目的:きゅうり、トマト、にんじん、じゃがいも、ピーマンを真水と食塩水に入れたとき、それぞれの浮き沈みがどう変化するのかを観察し、その理由を明らかにすること。
- テーマ例3:氷の溶け方実験
- 動機:ジュースに氷を入れたら、普通の水よりも早く溶けた気がした。
- 目的:水、砂糖水、塩水、油の中に氷を入れたとき、どの液体が最も早く氷を溶かすのかを調べ、そのメカニズムを解明すること。
【社会・調べ学習】の目的の書き方
地域の歴史や文化、環境問題など、本やインターネット、インタビューなどを使って調べる「調べ学習」も人気のテーマです。 調べ学習では、「何について、どこまで詳しく知りたいのか」という調査の範囲を明確にすることが大切です。
- テーマ例1:地域の歴史調べ
- 動機:近所を散歩していると、古い石碑を見つけた。この地域にどんな歴史があるのか興味が湧いた。
- 目的:私が住む〇〇町の歴史について、図書館の資料や地域の方へのインタビューを通して調べ、町の名前の由来と、昔と今の様子の変化を明らかにすること。
- テーマ例2:世界のあいさつ調べ
- 動機:テレビで外国人がいろいろな言葉であいさつしているのを見て、他の国ではどんな言い方をするのか知りたくなった。
- 目的:世界各国の「こんにちは」「ありがとう」というあいさつを10カ国以上調べ、その言葉の由来や、あいさつに込められた文化的な意味を比較・考察すること。
- テーマ例3:スーパーマーケットの工夫調べ
- 動機:いつも行くスーパーで、商品の並べ方が季節によって変わることに気づいた。
- 目的:近所の〇〇スーパーで、お客さんが商品を買いやすくなるように、どのような工夫(陳列方法、ポップ、試食販売など)が行われているのかを調査し、その効果を分析すること。
【工作・観察】の目的の書き方
何かを作ったり、生き物や植物の成長をじっくり見たりする工作・観察も、楽しく取り組める自由研究です。 この分野では、「より良いものを作るための条件は何か」「成長や変化の過程で何が起こるのか」を探ることが目的になります。
- テーマ例1:よく飛ぶ紙飛行機作り
- 動機:友達と紙飛行機を飛ばして遊んだが、自分の作った飛行機だけ全然飛ばなくて悔しかった。
- 目的:紙の種類、翼の形、折り方、重りの付け方などの条件を変えて紙飛行機を作り、最も長く、遠くまで飛ぶための最適な条件を見つけ出すこと。
- テーマ例2:アサガオの観察日記
- 動機:学校で育てたアサガオの種を家に持ち帰った。毎日お世話をして、花が咲く様子を最後まで見届けたいと思った。
- 目的:アサガオの種が発芽してから花が咲き、枯れるまでの成長過程を毎日観察・記録し、その変化(つるの伸び方、葉の数、花の咲く時間など)を明らかにすること。
- テーマ例3:結晶づくり
- 動機:図鑑で見たキラキラした宝石のような結晶を、自分でも作ってみたいと思った。
- 目的:ミョウバンを溶かした水の温度や濃さを変えることで、より大きく、形の整った結晶を作るための最適な条件を明らかにすること。
自由研究の目的の書き方で悩んだときのチェックポイント
目的を書き上げてみたものの、「これで本当に大丈夫かな?」と不安になることもあるでしょう。そんなときは、以下の3つのポイントをチェックしてみてください。目的をより良くするためのヒントが見つかるはずです。
テーマと目的は一貫しているか
まず最も大切なのは、研究のテーマと目的がしっかりと結びついているかという点です。例えば、「いろいろな石を集める」というテーマなのに、目的が「川の水がきれいな場所を調べること」になっていては、話がかみ合いません。
「〇〇(テーマ)について、△△(目的)を明らかにする」というように、テーマと目的が一直線につながっているかを確認しましょう。研究のタイトルと目的を見比べて、内容にズレがないか、誰が読んでも自然な流れになっているかを客観的に見てみることが重要です。もし違和感があれば、テーマか目的のどちらかを修正して、一貫性を持たせましょう。
自分の力で達成できる内容か
壮大な目的を立てるのは素晴らしいことですが、夏休みの期間中、そして自分(または親子)の力だけで達成できる現実的な内容であることも非常に重要です。
例えば、「地球温暖化を止める方法を明らかにすること」という目的は、あまりにも大きすぎて自由研究の範囲を超えてしまいます。そうではなく、「私たちの家庭でできる、二酸化炭素を減らすための具体的な工夫を10個見つけ、その効果を調べること」のように、自分の身の回りで調査・検証できる範囲に絞り込むことが大切です。
研究を始める前に、目的を達成するために必要な道具はそろうか、調査にかかる時間はどれくらいか、安全に実験できるかなどを一度考えてみましょう。少し背伸びするくらいの挑戦は良い経験になりますが、無理のない計画を立てることが研究を最後までやり遂げるコツです。
「~を調べる」「~を明らかにする」などの言葉を使えているか
目的の文章は、研究のゴールを宣言するものです。そのため、「~について知りたい」「~が不思議だ」といった曖昧な気持ちの表現で終わらせず、「~を調べる」「~を明らかにする」「~を比較する」といった、行動を表す断定的な言葉で締めくくるようにしましょう。
- 悪い例:「なぜ虹は七色なのか知りたい。」
- 良い例:「プリズム(光を分ける道具)を使った実験を通して、太陽の光が七色に分かれる仕組みを明らかにすること。」
このように、具体的なアクションを示す言葉を使うことで、研究への意欲が伝わるだけでなく、何をすべきかが明確になります。書き終えた目的の文末をチェックし、研究のゴールとしてふさわしい表現になっているかを確認してみてください。
まとめ:自由研究の目的の書き方をマスターして、研究を成功させよう!
この記事では、自由研究の要となる「目的」の書き方について、その重要性から動機との違い、具体的な作成ステップ、テーマ別の例文まで詳しく解説してきました。
自由研究の目的とは、「その研究で何を明らかにしたいのか」というゴールです。 この目的を最初にしっかり設定することで、研究の道筋が明確になり、最後のまとめまでスムーズに進めることができます。 「なぜだろう?」という動機(きっかけ)から、「何を解明したいか」という目的(ゴール)へと考えを進めることがポイントです。
目的の書き方に迷ったら、まずは自分の「知りたい!」という気持ちを書き出し、それを具体的な「問い」の形に変え、「~を明らかにすること」といった言葉で文章にしてみましょう。そして、その目的が自分の力で達成可能なものか、テーマと一貫しているかを確認することが大切です。
目的の書き方をマスターすれば、自由研究はもっと楽しく、そして学びの多いものになるはずです。この記事を参考に、あなただけの素晴らしい自由研究を完成させてください。
コメント